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緒言:あなたは「モグラ叩き」をしていませんか?
目の前に現れた問題(モグラ)を、とりあえず叩いて解決したつもりになる。しかし、しばらくすると同じ問題が別の場所から顔を出す…。このような「モグラ叩き」のような対症療法に追われていないでしょうか。ビジネスや日常生活における多くの問題は、表面的な事象の裏に、より根深く、本質的な原因が隠されています。
課題解決思考とは、この本質的な原因(真因)を見つけ出し、根本的な解決策を導くための思考プロセスです。それは単なるテクニックではなく、物事を構造的に捉え、効果的な打ち手へと繋げるための知的な営みと言えます。本稿では、この課題解決思考を3つのステップに分解し、その実践方法を解説します。
ステップ1:問題の定義 (Problem Definition) - 「何を」解決するのか?
課題解決の第一歩にして最も重要なのが、「解くべき問題」を正しく定義することです。多くの場合、私たちが最初に認識するのは「問題」そのものではなく、問題によって引き起こされた「症状」に過ぎません。
- 症状の例: 「売上が下がっている」「残業時間が増えている」「ユーザーからのクレームが多い」
- 問題の定義: これらの症状を引き起こしている根本的なメカニズムは何か?を明らかにすること。
ここで有効なのが**「As-Is / To-Be」分析**です。
- As-Is (現状): 現在、何が、どのように起きているのか。事実を客観的に記述します。
- To-Be (あるべき姿): 本来、どのような状態であるべきか。目標を具体的に定義します。
「現状」と「あるべき姿」のギャップこそが、私たちが解決すべき「問題」です。例えば、「売上が下がっている」(症状) のではなく、「主要顧客層であるA層の、商品Bに対するリピート購入率が、目標の50%に対し30%に留まっている」(問題) のように、具体的かつ測定可能な形で問題を定義することが、後の分析の精度を大きく左右します。
ステップ2:原因の分析 (Cause Analysis) - 「なぜ」それが起きるのか?
問題が定義できたら、次はその原因を深掘りします。なぜ、そのギャップは生まれているのでしょうか。ここで陥りがちなのが、思い込みや経験則で原因を決めつけてしまうことです。
原因分析の代表的なフレームワークが**「なぜなぜ分析」と「ロジックツリー」**です。
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なぜなぜ分析: 定義された問題に対して「なぜ?」という問いを繰り返し、真因に迫る手法です。「なぜリピート率が低いのか?」→「新規顧客向けのキャンペーンに注力しすぎているから」→「なぜなら、短期的な売上目標の達成が優先されているから」…というように、5回ほど繰り返すと、施策レベルから組織的な課題へと、原因のレイヤーが深まっていくのが分かります。
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ロジックツリー (Why Tree): 問題を頂点に置き、その原因として考えられる要素をMECE(ミーシー:Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive / 漏れなく、ダブりなく)の原則に従って分解していく手法です。これにより、原因の全体像を構造的に把握し、どの要素が最も影響度が大きいか(ボトルネックか)を特定することができます。
ステップ3:解決策の立案と評価 (Solution Planning & Evaluation)
真因が特定できたら、いよいよ解決策を考えます。重要なのは、いきなり一つのアイデアに飛びつくのではなく、複数の選択肢を洗い出し、客観的な基準で評価することです。
- 解決策の洗い出し: ブレインストーミングなどを用いて、特定した原因に対する打ち手を、質より量で幅広くリストアップします。
- 解決策の評価: 各打ち手を**「効果(インパクト)」「コスト(実現性)」「期間」**といった軸で評価し、優先順位をつけます。単純な二次元マップ(縦軸:効果、横軸:コスト)でプロットするだけでも、どの施策から着手すべきかが視覚的に明らかになります。
- アクションプランの策定: 優先度の高い解決策について、「誰が」「いつまでに」「何をするか」を具体的に定めた実行計画に落とし込みます。
結論:課題解決は「思考のサイクル」
課題解決思考は、一度身につければあらゆる場面で応用可能なポータブルスキルです。それは「問題定義→原因分析→解決策立案」という直線的なプロセスというよりは、解決策を実行し、その結果をみて再び「現状(As-Is)」を問い直す、仮説検証のサイクルそのものです。このサイクルを回し続けることこそが、個人と組織を成長させ、真の価値創造へと繋がるのです。