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VR歩行の極限を求めて - オフィスチェアで作る!着座重心移動ハードウェア 2025-10-03

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はじめに:座ったまま、VR世界を自由に歩く

長時間VRをプレイしていると、どうしても座りたくなります。しかし、座ったままコントローラーで移動すると、没入感が削がれ、VR酔いの原因になることも。もし、座ったまま、手ぶらで、体重を少し動かすだけで自然に歩き回れたら…?

この記事では、そんな夢を叶える「着座重心移動インターフェース」の作り方を、電子工作の初歩から解説します。身近なオフィスチェアが、最高のVR歩行デバイスに生まれ変わります!

準備するもの

ハードウェア

  1. オフィスチェア: キャスター付きの一般的なものでOK。
  2. Arduino Leonardo または Arduino Micro: PCからゲームパッドとして認識させられる、頭脳となるマイコンボードです。(※Arduino Unoは不可)
  3. 感圧抵抗(FSR)センサー: 圧力を検知するセンサー。今回は4つ使います。(例: Square FSR, 1.5-inch)
  4. 抵抗 (10kΩ): 4つ。FSRセンサーの値を読み取るために使います。
  5. ブレッドボードとジャンパーワイヤー: はんだ付け不要で回路を組むための道具一式。
  6. USBケーブル: ArduinoをPCに接続するためのもの。

ソフトウェア

  1. Arduino IDE: 公式サイトから無料でダウンロードできます。

STEP1: 回路を組もう

まず、FSRセンサーの圧力変化をArduinoが読み取れるように、簡単な電気回路を組みます。FSRは圧力がかかると抵抗値が下がるセンサーなので、固定抵抗と組み合わせて「分圧回路」を作ります。

(ここに、FSRと10kΩ抵抗を使い、Arduinoの5V、GND、アナログ入力ピン(A0)に接続する簡単な回路図のイメージが入ります)

この回路を、4つのFSRセンサーそれぞれについて作り、Arduino LeonardoのA0, A1, A2, A3ピンに接続してください。

  • A0: 背中用センサー
  • A1: 腿(前傾)用センサー
  • A2: 尻(左)用センサー
  • A3: 尻(右)用センサー

STEP2: Arduinoのプログラミング環境を整える

  1. PCにArduino IDEをインストールし、起動します。
  2. メニューの「ツール > ボード」から「Arduino Leonardo」を選択します。
  3. 次に、Arduinoをゲームパッドとして機能させるためのライブラリをインストールします。メニューの「ツール > ライブラリを管理」を開き、検索ボックスに Joystick と入力します。Joystick by Matthew Heironimus を見つけてインストールしてください。

STEP3: 重心を判定するコードを書こう

いよいよプログラミングです。以下のコードをArduino IDEにコピー&ペーストしてください。このコードは、椅子の圧力変化を検知し、仮想的なジョイスティックの入力に変換します。

#include <Joystick.h>

// Joystickライブラリを初期化
Joystick_ Joystick(JOYSTICK_DEFAULT_REPORT_ID, JOYSTICK_TYPE_GAMEPAD, 
  0, 0,                  // Button Count, Hat Switch Count
  true, true, false,     // X, Y, Z Axis
  false, false, false,   // Rx, Ry, Rz Axis
  false, false,          // Rudder, Throttle
  false, false, false);  // Accel, Brake, Steering

// センサーを接続したピン
const int PIN_BACK = A0;    // 背中
const int PIN_FRONT = A1;   // 腿(前傾)
const int PIN_LEFT = A2;    // 尻(左)
const int PIN_RIGHT = A3;   // 尻(右)

// 平常時のセンサー値(キャリブレーション用)
int base_back, base_front, base_left, base_right;

// 移動判定の閾値(この値は後で調整します)
const int THRESHOLD = 100;

void setup() {
  // ジョイスティックを開始
  Joystick.begin();

  // 起動時に5秒間の平均値を平常値としてキャリブレーション
  Serial.begin(9600);
  Serial.println("キャリブレーション開始... 椅子に普通に座ってください");
  long sum_back = 0, sum_front = 0, sum_left = 0, sum_right = 0;
  for (int i = 0; i < 50; i++) {
    sum_back += analogRead(PIN_BACK);
    sum_front += analogRead(PIN_FRONT);
    sum_left += analogRead(PIN_LEFT);
    sum_right += analogRead(PIN_RIGHT);
    delay(100);
  }
  base_back = sum_back / 50;
  base_front = sum_front / 50;
  base_left = sum_left / 50;
  base_right = sum_right / 50;
  Serial.println("キャリブレーション完了!");
}

void loop() {
  // 現在のセンサー値を読み取る
  int val_back = analogRead(PIN_BACK);
  int val_front = analogRead(PIN_FRONT);
  int val_left = analogRead(PIN_LEFT);
  int val_right = analogRead(PIN_RIGHT);

  // 平常時からの変化量を計算
  int delta_back = val_back - base_back;
  int delta_front = val_front - base_front;
  int delta_left = val_left - base_left;
  int delta_right = val_right - base_right;

  // 前後移動の判定
  if (delta_front > THRESHOLD && delta_back < -THRESHOLD/2) {
    // 前傾姿勢 = 前進
    Joystick.setYAxis(127);
  } else if (delta_back > THRESHOLD) {
    // 後傾姿勢 = 後退/ブレーキ
    Joystick.setYAxis(-127);
  } else {
    // 中立
    Joystick.setYAxis(0);
  }

  // 左右旋回の判定
  int turn = delta_right - delta_left;
  int mapped_turn = map(constrain(turn, -200, 200), -200, 200, -127, 127);
  Joystick.setXAxis(mapped_turn);
  
  delay(10);
}

STEP4: センサーを椅子に設置しよう

Arduinoにコードを書き込んだら、センサーを椅子に配置します。布テープや養生テープで、クッションの下やカバーの裏に貼り付けましょう。

  • 背中用(A0): 寄りかかった時に一番圧力がかかる、背もたれの中央あたり。
  • 腿用(A1): 前傾姿勢になった時に圧力がかかる、座面の先端中央。
  • 尻用(A2, A3): 左右のお尻(坐骨)が当たる位置にそれぞれ配置。

STEP5: ゲームで動かしてみよう!

  1. ArduinoをUSBケーブルでPCに接続します。PCは自動的に新しいゲームコントローラーとして認識します。(Windowsなら「デバイス マネージャー」の「ヒューマン インターフェイス デバイス」で確認できます)
  2. SteamVR対応のゲームを起動し、移動設定を「スムーズ移動」「ジョイスティック/ゲームパッドでの移動」などに変更します。
  3. 椅子に座って体重を移動させてみましょう!前に傾けば前進、後ろに寄りかかれば後退、お尻を左右にずらせば旋回するはずです。

うまく動かない場合は、Arduino IDEの「シリアルモニタ」を開いてセンサー値の変化を確認し、コード内の THRESHOLD の値を調整してみてください。

おわりに

お疲れ様でした!これであなただけの着座VR歩行デバイスが完成です。座ったまま、手ぶらで、直感的な体重移動だけでVR世界を散策する体験は、これまでのVRの常識を覆すほど快適で、没入感の高いものになるはずです。

ここからさらに、圧力の強さで移動速度を変えたり、特定の動作(例:素早くお尻を浮かせる)でジャンプしたりと、アイデア次第でカスタマイズは無限に広がります。ぜひ、あなただけの「VR歩行の極限」を追求してみてください!

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